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リテールDX 9 「“映すだけ”から“動かす仕組み”へ ― 日本のリテールDXのこれから」

IMDが発表する「2024年世界デジタル競争力ランキング」によれば、日本は67カ国・地域中で31位。G7諸国の中でも最下位水準に位置し、先進国の中でデジタル競争力が低い現状が浮き彫りになっている。特に「将来への準備(Future Readiness)」の分野では38位と低く、企業の俊敏性や人材のデジタルスキルが不足していることが指摘されている。これは、リテール業界におけるDXの進展にもそのまま影響を与えている。

一方、海外ではリテールDXが急速に進展している。たとえばヨーロッパでは、サイネージとPOSや在庫システムが連動し、在庫状況に応じて販促映像を自動で切り替える仕組みが一般化している。フランスやイギリスでは、顧客の購買履歴やアプリの利用状況をもとに、店舗内のディスプレイを動的に変化させ、個々の顧客に合わせたメッセージを届ける取り組みも始まっている。北欧諸国では、IoTセンサーやAI解析を活用し、顧客動線や行動を踏まえて店頭の訴求を瞬時に最適化する事例もある。

米国や中国ではさらに先を行っている。AIカメラや顔認証決済を組み合わせた購買行動分析、Amazon Goのような無人店舗モデル、アプリやスーパーアプリと店舗の完全統合など、サイネージを含む店舗ITはすでに「顧客体験の中核」として機能している。

これに対して日本の現状はどうか。確かに、都市部を中心にデジタルサイネージの設置は広がっている。しかしその多くは「情報を映すだけ」にとどまり、顧客データや購買行動と連動するケースは限られている。結果として、サイネージが売上や顧客体験の改善に直結せず、「ただの広告媒体」として扱われているのが実情だ。

なぜ日本ではこうした遅れが生じているのか。第一に、IT投資を「コスト」として捉える意識が依然として強く、サイネージ導入も短期的な広告効果や販促枠販売に偏りがちである。第二に、POS、EC、アプリ、在庫管理といったシステムが縦割りで統合されておらず、データを横断的に活用する基盤が整っていない。第三に、導入してもPoC(実証実験)にとどまり、全社規模での展開や運用体制の確立に至らないことも多い。そして第四に、デジタル人材不足が深刻で、データを活用した戦略立案や実行を担う人材が足りていない。

こうした背景を踏まえると、日本のリテールDXを進めるにはいくつかの方向性が求められる。
第一に、デジタルサイネージを「顧客データ活用の中核」として位置づけることだ。単なる情報掲示から脱却し、リアルタイムで顧客行動や在庫に応じた情報を届ける仕組みへと進化させる必要がある。
第二に、AI・POS・アプリとの連携を強化し、時間帯や属性に応じて最適なコンテンツを自動配信することで、顧客体験の質を高めることができる。
第三に、OMO(Online Merges with Offline)の発想を推進し、オンラインとオフラインの接点を統合することで、顧客がどこで接触しても一貫した体験を提供できる体制を構築することが重要だ。


さらに、経営層の意識改革と人材育成も欠かせない。IT投資を単なるコストではなく「成長を生む戦略資産」と捉え、組織を横断してDXを推進する文化を根付かせる必要がある。

こうした課題を解決するための有効な手段の一つが、Diseのデジタルサイネージソリューションである。Diseは、POSやECデータ、来店者情報などと連携し、時間帯や購買行動に応じてサイネージのコンテンツをリアルタイムで最適化できる。これにより、サイネージは「映すだけの装置」から「顧客を動かす仕組み」へと進化する。さらに、クラウドベースの運用により、全店舗での統合管理やスケールアップも容易だ。

日本がデジタル競争力ランキングで31位という現実を直視するならば、リテール業界は今こそ「サイネージを戦略的資産とする発想」に転換する必要がある。Diseのソリューションは、その第一歩を後押しする強力な武器となりうるだろう。

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