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ホスピタリティDX 6 映すだけの時代から、ホスピタリティDXの時代へ (シリーズ 映すだけの時代からの次の時代へ)

映すだけの時代から、ホスピタリティDXの時代へ

―― AIエージェントがつなぐ、心で伝わるおもてなし ――

デジタルサイネージは、これまで「映像を映す装置」として街や施設に広がってきた。
広告や案内を定期的に切り替え、通行人の目を引く。
しかしそこに“心の通うやりとり”はなかった。
人に代わって情報を流すだけの存在――。
けれど今、AIエージェントの登場によって、その役割は大きく変わろうとしている。

AIが声を持ち、感情を理解し、人と対話を始めたとき、
サイネージは“おもてなしのフロントライン”へと変わる。
ホテルのロビーで、観光案内所で、ショッピングモールの一角で。
AIアバターが「こんにちは、ようこそお越しくださいました」と笑顔で迎え、
利用者の表情や年齢層を読み取りながら最適な案内を行う。
それは単なる自動応答ではなく、相手の気分に寄り添った接客体験だ。
ホスピタリティに“デジタルの温度”が加わった瞬間である。

クラウド型サイネージプラットフォーム「Dise」との連携により、
このAIエージェントは常に学び続ける。
来訪者の行動データや反応を解析し、
「どんなメッセージが響いたか」「どの時間帯に混雑が多いか」を把握。
時間帯や天気、イベント情報に合わせて映像や音声をリアルタイムに切り替える。
たとえば雨の日には「傘のレンタルカウンターは左手にございます」、
休日には「本日のカフェおすすめはこちらです」と自然に案内する。
これまで人が判断していた“気配り”を、AIが瞬時に実行するのだ。

この変化の本質は、効率化ではなく“共感化”にある。
AIは人の代わりに接客するのではなく、
人と同じ視点で、顧客体験をより深く理解するパートナーになる。
言葉遣い、表情、声のトーンまでブランドに合わせて最適化し、
その企業らしい「おもてなしのスタイル」を学んでいく。
それにより、ホテルなら「ブランドの品格を感じる接遇」、
観光施設なら「親しみのある案内」、
商業施設なら「購買を後押しする対話」が自然に生まれる。
AIが、ホスピタリティを“ブランド体験”へと昇華させるのだ。

また、バックエンドではDiseの分析機能が活躍する。
サイネージがどの場所で、どの映像に最も反応があったか。
AIが取得したデータを可視化し、施設運営者は“人の流れと感情の動き”を同時に把握できる。
これにより、接客スタッフの配置やコンテンツの改善にも活かせる。
現場の感覚とデジタルデータが融合することで、
“学習するホスピタリティ”が実現する。

「映すだけの時代から、ホスピタリティDXの時代へ。」
それは単なるデジタル化ではない。
人の温もりを失わずに、テクノロジーの力で“より深いおもてなし”を届ける挑戦だ。
AIエージェントが支えるのは、忙しい現場の省力化だけでなく、
利用者一人ひとりの心に残る体験の創出である。
人とAIが共に考え、感じ、伝えることで、
ホスピタリティの価値はこれまでにない広がりを見せる。

これからの時代、サイネージは「映す」ものではなく、「迎える」ものになる。
そしてその先には、AIがつくる“心でつながるサービス”がある。
それが、ホスピタリティDXの新しいかたちだ。

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