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地方創生 7 映すだけの時代から、観光DXの時代へ (シリーズ 映すだけの時代からの次の時代へ)

映すだけの時代から、観光DXの時代へ

―― AIエージェントが生み出す、旅先での新しい出会い ――

観光地のサイネージといえば、これまでパンフレットの延長のような存在だった。
美しい映像やイベント告知を流し、訪れる人々に情報を届ける。
だがそこに“対話”はなかった。
通り過ぎる人に映像を見せるだけのメディア――。
いま、その常識が大きく変わり始めている。
その変化を牽引するのが、AIエージェントだ。

AIエージェントを搭載したデジタルサイネージは、
もはや「案内板」ではなく、「話しかける観光コンシェルジュ」へと進化している。
旅先の駅前で、AIアバターが「ようこそ○○市へ。今日は何を楽しみたいですか?」と微笑む。
言葉を選び、声のトーンを変えながら、観光客の属性や目的を推定し、
季節や天候、混雑状況に合わせた最適なプランを提案する。
その一言から、旅が動き出す。
AIが観光の“体験設計”を支える時代が始まっている。

クラウド型サイネージプラットフォーム「Dise」との連携により、
この仕組みは常に最新の地域情報とつながる。
地元商店のイベント、交通機関の運行状況、天気、SNSの話題。
AIはそれらの情報をリアルタイムに解析し、
観光客一人ひとりに合わせた情報を表示する。
たとえば、雨が降れば「駅前の屋内美術館」を、
晴れれば「おすすめの絶景スポット」を案内する。
情報が“環境に反応して変わる”ことこそ、観光DXの本質である。

さらにAIエージェントは、訪問者の行動や反応を学習し続ける。
どの案内に立ち止まったか、どの言葉に反応したか。
DiseとAIエージェントの分析機能と組み合わせることで、
自治体やDMOは観光動向をリアルタイムに可視化できる。
従来のアンケートや人手調査に頼らず、
AIが現場の「感覚」をデータとして捉え、次の施策へとつなげる。
まさに“生きた観光マーケティング”だ。

観光は「情報」ではなく「体験」である。
AIエージェントはその入口で、旅の印象を決める“最初の声”になる。
多言語対応はもちろん、訪問者の文化的背景や興味に合わせた対応も可能だ。
外国人旅行者には英語や中国語での自然な会話を、
家族連れには子どもが喜ぶフレンドリーな口調を。
一人ひとりに最適化された“おもてなし”が、AIによって実現する。
それは、地域が持つ魅力を“人の言葉で伝える”ための新しいツールでもある。

「映すだけの時代から、観光DXの時代へ。」
この変化は、観光地がデジタル化するという単純な話ではない。
AIが地域の声を代弁し、人と場所を“つなぐ存在”になることを意味している。
スクリーンを通して話しかけるその言葉は、
ガイドブックには載らない“体験の入口”になる。

観光の価値が「見る」から「感じる」へと移り変わるいま、
AIエージェント×サイネージは、地域と人を再び結びつける鍵となる。
デジタルがリアルを置き換えるのではなく、
デジタルがリアルを強くする。
その新しい形こそが、私たちが目指す観光DXの姿である。

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